はじめに動物病院における血液検査は、病気の早期発見や健康管理に欠かせません。血液検査によって、動物の体内でどのような変化が起こっているのかを把握でき、腎臓・肝臓・ホルモンバランスなどの異常を迅速に検出することが可能です。しかし、血液検査にはさまざまな種類があり、使用される機器の特性や診断精度も異なります。正確な診断を行うためには、どのような検査があり、それぞれどんな役割を持つのかを理解することが重要です。本記事では、動物病院で実施される血液検査の基本から、使用される機器の種類、選び方、活用方法までを徹底解説します!基礎知識:動物病院の血液検査とは?📌 血液検査の役割とは?血液検査は、動物の健康状態を把握し、病気の早期発見や治療方針を決定するために不可欠な診断手法です。血液中には、酸素を運ぶ赤血球、免疫機能を担う白血球、血液の凝固に関与する血小板、さらに肝臓・腎臓・膵臓などの臓器の状態を反映する成分が含まれています。これらの値を測定し、動物の体調や異常を特定するのが血液検査の目的です。特に、症状が目に見えない初期段階での異常を発見できる点が血液検査の大きなメリットです。たとえば、腎臓病は明らかな症状が現れる前に血液検査で診断が可能なことが多く、早期治療ができれば病気の進行を抑えることができます。✅ 動物病院で行われる主な血液検査の種類動物病院で実施される血液検査には、以下の3つの主要な検査があります。1. CBC(完全血球計算)✅ 目的:血液中の細胞成分を測定し、感染症・貧血・炎症・出血などの有無を判断✅ 検査項目:赤血球数(RBC):貧血や脱水の評価白血球数(WBC):感染症や炎症の有無血小板数(PLT):止血機能の確認📌 こんな時にCBCが役立つ!・感染症の疑いがある場合(例:発熱、元気がない)・貧血や血液の異常が疑われる場合(例:歯茎の色が薄い、出血が止まらない)2. 生化学検査✅ 目的:血液中の酵素や電解質を測定し、臓器の機能を評価✅ 検査項目:肝臓機能(ALT、AST、ALP、総ビリルビンなど)腎臓機能(BUN、クレアチニン)血糖値(GLU)📌 こんな時に生化学検査が役立つ!・肝臓病の疑い(黄疸、食欲不振)・腎臓病の疑い(多飲多尿、体重減少)・糖尿病のスクリーニング(体重減少、過剰な水分摂取)3. ホルモン検査✅ 目的:ホルモン分泌の異常を検査し、内分泌系の疾患を診断✅ 検査項目:甲状腺ホルモン(T4、TSH) → 甲状腺機能亢進症・低下症の診断副腎皮質ホルモン(コルチゾール) → クッシング症候群・アジソン病の診断📌 こんな時にホルモン検査が役立つ!・異常な体重増減(急激な体重増加・減少)・皮膚や毛並みのトラブル(脱毛、皮膚の黒ずみ)・異常な水分摂取や多尿(頻繁に水を飲み、大量におしっこをする)血液検査機器の種類と特徴動物病院で行われる血液検査には、さまざまな機器が使われます。それぞれの機器には異なる特徴があり、検査目的に応じて適切に選択することが重要です。ここでは、主に使用される3種類の血液検査機器について詳しく解説します。✅ 自動血球計数器(CBC機器)自動血球計数器(CBC機器)は、血液中の細胞成分を測定する機器で、赤血球・白血球・血小板の数や形状を評価するのに使用されます。この検査によって、貧血・感染症・炎症・血液凝固異常などを診断することができます。📌 CBC機器のメリット迅速な測定:数分で検査結果が得られるため、救急時や緊急診断に役立つ。大量処理が可能:1回の測定で複数のデータを同時に取得できる。高い再現性:自動化されているため、測定者による誤差が少ない。⚠️ CBC機器のデメリット詳細な形態分析はできない:異常な細胞形状や病的変化の識別には追加の顕微鏡検査が必要。小動物ではサンプル量が限られる:特に猫や小型犬では、十分な血液量を採取できない場合がある。✅ 生化学分析装置生化学分析装置は、血液中の酵素や電解質、栄養素を測定し、肝臓・腎臓・膵臓の機能を評価するために使用されます。特に、慢性疾患の管理や全身状態の把握に欠かせない検査機器です。📌 生化学分析装置のメリット多様な臓器機能の評価が可能:肝酵素、腎機能マーカー、血糖値、電解質バランスなどを詳細に測定できる。診断の幅が広い:代謝性疾患や内分泌疾患のスクリーニングにも活用可能。迅速な結果提供:リアルタイムでの診断が可能で、治療計画を早期に立てやすい。⚠️ 生化学分析装置のデメリット試薬のコストが高い:測定項目によっては、特定の試薬が必要になり、維持コストがかかる。機器の定期メンテナンスが必要:測定精度を保つために定期的なキャリブレーションが求められる。✅ 血液ガス分析装置血液ガス分析装置は、血液中の酸素・二酸化炭素・pHバランスを測定し、呼吸・循環器系の状態を把握するために使用されます。特に、麻酔管理や重症患者のモニタリングに役立つ機器です。📌 血液ガス分析装置のメリット酸素・二酸化炭素の動態をリアルタイムで評価可能:呼吸不全や心疾患の診断に有用。pHバランスを測定できる:酸塩基平衡の異常(代謝性アシドーシスやアルカローシスなど)の評価に適している。動物の全身状態を的確に判断できる:急性疾患や緊急対応時の意思決定に役立つ。⚠️ 血液ガス分析装置のデメリット操作に習熟が必要:測定方法や結果の解釈に専門的な知識が求められる。精度を保つための定期校正が必要:測定機器の精度がわずかでも狂うと、診断ミスにつながる可能性がある。検査機器の選び方と活用法動物病院で血液検査を行う際、どの機器を導入するかは非常に重要なポイントです。病院の診療方針や検査の目的に応じて、適切な機器を選ぶことで、効率的かつ正確な診断が可能になります。また、機器を有効に活用することで、検査の精度向上や診療のスピードアップにもつながります。✅ 検査機器の選び方血液検査機器を選ぶ際には、以下のポイントを考慮する必要があります。診療内容に合った機器を選ぶ一般診療が中心の病院では、CBC(自動血球計数器)と生化学分析装置が基本となります。血液の細胞成分や臓器機能の異常を把握でき、幅広い診断に対応できます。一方で、救急診療を多く行う病院では、血液ガス分析装置を導入することで、呼吸・循環機能の詳細な評価が可能になります。操作性が良く、メンテナンスしやすいものを選ぶ機器の操作が複雑だと、スタッフの習熟に時間がかかり、検査の効率が下がることがあります。シンプルな操作で迅速に結果を得られる機器を選ぶことが重要です。また、定期的なメンテナンスが容易で、トラブル発生時に迅速なサポートが受けられるメーカーを選ぶことも大切です。ランニングコストと導入費用を考慮する血液検査機器は導入費用だけでなく、試薬のコストや定期的なメンテナンス費用もかかるため、長期的な視点でコストを考える必要があります。例えば、検査頻度が高い病院では、試薬の消費量が多くなるため、コストパフォーマンスの良い機器を選ぶことが重要です。🛠️ 血液検査機器の活用法適切な機器を導入した後は、それを最大限に活用することが重要です。✅ 電子カルテと連携し、診断の精度を向上させる最近では、血液検査機器と電子カルテを連携させることで、検査結果を迅速に共有し、診療の精度を向上させる動きが進んでいます。診断時間を短縮し、より効率的な治療計画を立てることが可能になります。✅ 検査データを蓄積し、トレンドを分析する定期的な血液検査データを蓄積することで、病気の進行具合や治療の効果を客観的に評価できます。特に慢性疾患の管理において、経時的なデータの変化を分析することは非常に有効です。✅ スタッフのトレーニングを定期的に実施する高性能な機器を導入しても、スタッフが正しく使えなければその価値は半減します。定期的な研修を行い、検査技術の向上を図ることで、より正確な診断につなげることができます。⚠️ 注意点と失敗しないためのコツ血液検査は動物の健康状態を正確に把握するために不可欠ですが、検査手順のミスや環境要因によって結果に誤差が生じることがあります。ここでは、検査を成功させるための注意点と失敗を防ぐコツを解説します。📌 よくあるミスと対策1. サンプルの汚染採血時に毛や異物が混入すると、検査結果に影響を与えます。清潔な環境で採血し、無菌状態を保つことが重要です。2. 採血後の不適切な処理血液検査には適切な保存が必要です。CBC用のサンプルは凝固しないよう速やかに攪拌し、生化学検査用の血清は遠心分離して冷蔵保存しましょう。血液ガス分析は時間が経つと数値が変動するため、採血後すぐに測定することが大切です。3. 測定機器の誤作動キャリブレーション(校正)が不十分な機器を使用すると、測定結果が不正確になります。定期的なメンテナンスと校正を行い、機器の精度を保つことが必要です。4. ストレスによる影響動物が興奮すると、ストレスホルモンの影響で血糖値や白血球数が一時的に上昇することがあります。できるだけリラックスした状態で採血し、異常値が見られた場合は再検査を考慮しましょう。血液検査を効率的に活用するために血液検査機器を最大限に活用するためには、診断の精度向上と業務効率化を意識した運用が重要です。電子カルテとの連携を進めることで、検査結果をリアルタイムで共有でき、診断のスピードが向上します。手作業での記録ミスを防ぐ効果もあり、診療の効率化につながります。また、検査データを蓄積し、病気の進行や治療効果を分析することも大切です。特に、慢性疾患を抱える動物では、定期的な血液検査データを比較することで、病状の変化をより正確に把握できます。これにより、治療の見直しや早期対応が可能になります。まとめ血液検査は、動物の健康を守るために欠かせない診断ツールです。正確な検査を行うためには適切な機器の選定、適切な運用、スタッフのスキル向上が重要になります。検査データを有効に活用し、より精度の高い診療を実現しましょう。また、血液検査の活用だけでなく、動物病院の業務効率化も大きな課題です。株式会社Miracleでは、飼い主対応をより効果的に、より円滑にするための一気通貫サポート「ミラクルコネクト」を提供しています。ミラクルコネクトはオンライン問診や電子カルテを備えており、診療の効率化と患者さまの満足度向上を実現します。 使いやすいインターフェースと直感的な操作性により、スタッフの負担を軽減し、飼い主さまにも簡単にご利用いただけます。株式会社Miracle 公式サイトはこちら≫\無料デモ大好評受付中/デモのご相談、ご質問・お問い合わせ等も、お気軽にご連絡ください。お問い合わせはこちらから≫\お客様の声・導入事例はこちら/ミラクルのサービスを導入いただいた理由を、動物病院の院長先生にインタビューしました。インタビュー動画をチェックする≫インタビュー記事をチェックする≫※Youtubeへ遷移します