本記事は、ちょうど1年前に投稿した記事「動物病院で年商1億を超える4つの方法」の最新版です。https://miracle-connect.com/colums/f6VayavA我々は動物病院の院長先生や動物病院のスタッフさんに向けて、動物病院の経営のお役に立てばと日々記事を更新していますが、その中でも特に上記の記事は反応が良く(読んでくださる方が多く)、より内容をアップデートした記事を投稿しようと考えた次第です。 内容が重複する部分もあるかと思いますので、上記の記事を読んでから本記事を読んでくださるとより理解が深まるかと思います。是非ご一読ください。➤https://miracle-connect.com/colums/f6VayavA想定対象者:開業3年目から7年目の動物病院の院長先生動物病院が年商1億円を達成するための考え方とは?-力相応一番法の解説動物病院を開業し、数年間経営を続けていると、次に見えてくる大きな目標として『年商1億円』が挙げられるかと思います。動物病院業界において、年商1億円を達成している病院の割合は決して多くありません。つまり、ここを超えられるかどうかは、一つの重要な経営的な節目になるでしょう。では、動物病院が年商1億円を達成するにはどのような考え方が必要でしょうか。ここで紹介したいのが、「力相応一番法」という考え方です。力相応一番法とは、自分の持つ力に応じて『商品』『商圏』『客』のいずれか、あるいは複数の要素で「一番」を目指すという経営戦略のことです。具体的には、あなたの動物病院が提供する『商品(診療内容や対応可能な症例)』、ターゲットとする『商圏(診療対象地域)』、対応する『客(飼い主さんの層)』において、自院がもっとも得意とする領域で一番を目指すことが重要になります。たとえば、あなたの動物病院の規模が比較的大きく、設備や人材も充実しているのであれば、幅広い症例に対応する総合的な診療体制を築き、その総合力で地域ナンバーワンを目指すことができるでしょう。一方で、動物病院の規模がまだ小さい場合や、人材が十分に揃っていない場合には、あれもこれもと総花的にサービスを広げるより、特定の診療科目や症例に絞り込んで専門特化し、その領域で圧倒的に支持されるように力を集中する方が効果的でしょう。また、『商圏』に関しても、地元の限られたエリアだけをターゲットにするのか、少し遠方からでも飼い主さんに来院してもらえるような専門性のある診療内容や特化したサービスを展開するのかで、大きく戦略は異なります。『客層』においても、特定のニーズ(たとえば、高齢犬のケアや猫専門の診療など)に応えるサービスを強化することで、その領域での一番を確立することが可能になります。大切なのは、あなたの動物病院が「すべてにおいて一番」を狙うのではなく、「自分たちの現状の力を見極めた上で、勝てる領域に絞って一番を目指すこと」です。本記事では、この力相応一番法に基づき、具体的に年商1億円を達成するために効果的な経営戦略を4つ紹介していきます。あなたの動物病院の状況に最もフィットする戦略を見つけて、ぜひ実践に役立ててください。年商1億円を超えるための4つの動物病院経営スタイルとは?動物病院が年商1億円を超えるためには、病院の現状や規模、得意分野などの特性に合わせた経営戦略を選択することが重要だと先ほど説明しました。それぞれの経営スタイルには特徴やメリット・デメリットがありますので、あなたの病院に最も合うスタイルはどれかを考えながら読み進めてください。① 総合力型動物病院(勤務医・看護師のチーム力で勝負)総合力型動物病院とは、1つの病院内に複数の勤務獣医師が在籍し、獣医師を支える動物看護師や受付スタッフのレベルも高く、全員が一丸となって診療の質を高める「チーム型」の動物病院を指します。診療科目も幅広く、内科、外科、歯科、皮膚科などあらゆる領域で高度な治療を提供できるため、地域の一次診療から二次診療施設への橋渡し役として「1.5次診療」を目指すケースが多いです。総合力型動物病院では、院長1人に過度に依存するのではなく、獣医師や動物看護師それぞれが役割分担を明確にしてチーム医療を提供します。そのため、1拠点で年商3~5億円規模を目指す動物病院の王道パターンとも言えるでしょう。実際には勤務医が1~2名増え、新患数や外来数が徐々に伸びていく過程で年商1億円の壁を突破する病院が多いのが特徴です。総合力型動物病院のメリット総合力型動物病院の最大のメリットは「仕組み化がしやすい」という点です。年商が1億円前後に差しかかると、院長の仕事量は診療だけにとどまらず、スタッフ教育や採用活動、マーケティング、事務管理など、多岐にわたる業務に追われるようになります。この状況を改善するために、勤務医や動物看護師が各分野の役割を担える仕組みづくりが必須になります。例えば、動物看護師が院長に代わって獣医師専門学校や看護学校の就職説明会に参加したり、新人スタッフのトレーニングや指導を担当するようになることで、院長はより経営に専念できる環境が整います。また、組織が大きくなればなるほど、採用やスタッフ教育に対する投資がしやすくなるため、新卒採用の仕組みづくりや教育体制の整備が進み、病院の組織文化として定着します。さらに、診療科目を総合的に扱えることから、幅広い飼い主のニーズに対応でき、地域における評判や信頼も上がります。結果として患者数が安定的に増加し、経営の安定性が高まるのです。総合力型動物病院のデメリット総合力型動物病院の課題として最も大きいのは「スタッフのマネジメント力が求められること」です。規模が拡大するにつれ勤務医や看護師の人数が増加するため、院長の人柄やリーダーシップによってスタッフが定着するかどうかが大きく左右されます。実際に、院長のリーダーシップ不足やコミュニケーションの問題があると、勤務医や動物看護師が定着せず、人材の流動性が高くなってしまいます。勤務医が退職することで、その医師を信頼して通院していた飼い主が他院へ流れてしまい、売上が一気に低下するというケースも少なくありません。そのため、総合力型動物病院として成功するためには、スタッフとのコミュニケーションを日常的に密にとり、働きやすい職場環境を整えることが非常に重要になります。経営規模が拡大してもスタッフが気持ちよく働けるように、風通しのよい職場文化や明確な評価制度など、組織づくりの基礎をしっかりと固めることが欠かせません。また、患者が特定の勤務医にだけ依存しないような仕組みを構築することも大切になってきます。院長がこれまで担ってきたマーケティングや経営企画の役割を徐々にスタッフに移行し、院長は病院経営者として組織の仕組みづくりに専念できる体制を作りましょう。総合力型動物病院は規模拡大の王道ですが、それゆえに細かな組織運営の努力が求められることを念頭に置きながら取り組んでください。② 専門特化型動物病院(診療領域を絞ってブランド化)次に紹介するのは「専門特化型動物病院」です。この経営スタイルは、特定の診療科目や症例(例えば、整形外科、腫瘍科、皮膚科、眼科、歯科、猫専門など)に絞り込んで特化し、その分野での専門性やブランド力を高めることで年商1億円超えを目指すものです。専門特化型の動物病院では、地域内の競合と診療内容で明確な差別化ができるため、たとえ人口が少ない地域や競争が激しいエリアにあっても、他院にはない独自の強みを持つことができます。専門特化型動物病院のメリット専門特化型動物病院の最大のメリットは、「広域からの集患が可能になること」です。一般的な診療では飼い主は比較的近隣の動物病院を選びますが、専門性の高い診療科目の場合は遠方からでも通院してくれるケースが多くなります。そのため、商圏を狭い地域に限定せず、広域から患者を集めることができ、結果的に病院全体の集客力が向上するのです。また、特定の症例に専門特化することで、診療単価も上がりやすくなります。飼い主は専門的な治療を受けるために費用を惜しまない傾向があるため、高度な治療を提供する病院ほど収益性が高くなります。その結果、高単価で収益性の高い経営体制を構築しやすく、年商1億円を超えることも現実的に可能となるのです。さらに専門特化すると症例が自然に集中するため、スタッフがその分野での経験を積みやすくなります。獣医師や動物看護師がその専門領域として成長できる環境が整い、専門的な技術や知識が蓄積されます。一定の実績を積むことで「専門病院」としてブランディングが進み、病院自体の認知度が高まり、良い循環が生まれます。専門特化型動物病院のデメリット一方で、専門特化型の動物病院にも課題や難しさがあります。最大の課題は、「専門領域で高い水準の知識や技術を常に維持する必要がある」ことです。診療領域を絞って特化するということは、飼い主があなたの病院に専門家としての高度な治療を求めてくるということになります。その期待に応えられるだけのスキルや専門知識を、院長はもちろん勤務獣医師や動物看護師も常に身につけ、維持しなければなりません。また、専門特化型動物病院では設備面の充実も必要不可欠になります。症例に応じた高額な医療機器の導入や診療環境の整備に継続的な投資が求められるため、財務面での計画的なマネジメント力も必要です。さらに、院長先生の専門性や知名度に依存する傾向が非常に強いため、勤務獣医師への技術や知識の継承が難しく、院長が不在の場合や引退を考えるタイミングでは、後継者育成が大きな課題になります。飼い主が院長の専門性を頼りに来院するケースが多く、他の獣医師への引き継ぎが難しいため、勤務医が育ちにくくなることもあります。専門特化型の院長先生は職人気質の方が多く、細かな診療技術や症例へのこだわりが強い傾向があります。そうした職人的な診療スタイルは病院のブランディングにおいてプラスに働きますが、スタッフとのコミュニケーションや病院のオペレーション改善が後回しになる可能性もあります。そのため、院長先生が診療以外のマネジメント業務にも意識的に取り組み、組織運営を円滑に進める仕組みを整える必要があるでしょう。専門特化型動物病院は高収益を狙える反面、院長の技術・知識レベルの維持や後継者育成といった課題をしっかりと認識したうえで、経営戦略を進めていくことが成功への鍵となります。③ 看護師総合力型動物病院(看護師主導型で高収益を目指す)このタイプの動物病院は、獣医師が院長1名のみであっても、動物看護師が主体となって病院運営を支えることで、高収益を実現する経営スタイルです。具体的には、獣医師が直接行わなければならない診察・診断・手術以外の業務を、動物看護師が幅広く担当するということです。例えば、診療補助、飼い主への病状説明やアフターケアのアドバイス、栄養指導、予防医療の案内、さらには病院の受付や経営管理業務に至るまで、動物看護師が自律的に関わる形になります。単純計算すると、1名あたり年間1,000~1,300万円の売上を想定し、獣医師が院長1名のみ、動物看護師が9名(トリマー含む)の体制で年商1億円に到達できる計算です。看護師総合力型動物病院のメリット看護師総合力型動物病院の最大のメリットは、「スタッフの定着率が高く、安定経営につながりやすい」という点にあります。動物看護師が主導する場面が増えることで、飼い主さんにとって動物看護師が頼れる相談役となり、病院への信頼感が向上します。看護師は日常的に飼い主さんと接する機会が多いため、細かな悩みや不安を打ち明けやすい存在となり、コミュニケーションの質が向上します。また、動物看護師自身も、飼い主への説明やカウンセリングを任されることで、自主的に勉強や知識習得への意欲が高まります。看護師自身が積極的に学び、飼い主に説明する機会を通じて、病院全体の医療水準が向上し、顧客満足度が上昇します。この「看護師が積極的にアウトプットする仕組み」が院内に定着すると、病院のブランド価値も高まり、経営の安定化が図れます。さらに、看護師が主体的に経営や運営に関与するため、「病院を一緒に成長させている」という実感がスタッフに芽生えやすく、離職率が下がり、長期にわたって働いてくれる環境を整えることができます。看護師総合力型動物病院のデメリット一方で、この看護師総合力型動物病院は、「院長先生の人柄やリーダーシップに強く依存する」という課題があります。獣医師が院長1名のみである場合、その院長の経営判断力やコミュニケーション能力が病院の成否を大きく左右します。スタッフと円滑なコミュニケーションを取り、明確なビジョンや経営方針を示し続けることができる院長でなければ、看護師が主体となる病院運営は難しくなります。また、この経営スタイルを成功させるためには、「看護師長」などのリーダー職を適切に配置することが極めて重要です。院長の右腕となり、現場のまとめ役として他のスタッフをマネジメントする「看護師長」の人選には、院長の人材を見る目とマネジメント能力が問われます。動物看護師を中心とした全員経営を実現するには、スタッフそれぞれが自発的に動きやすい仕組みを整備する必要があります。具体的には、評価制度の整備、役割分担の明確化、スタッフが自ら課題を発見し改善できる風土づくりなどが求められます。院長先生には、診療以外にもスタッフの教育や成長促進、キャリア形成をサポートする役割が求められます。そのため、「人のマネジメント」という側面に強くフォーカスしながら経営判断を行い、看護師やスタッフ一人ひとりがモチベーションを高く保てる環境づくりに努めることが重要となります。看護師総合力型動物病院は、動物看護師を活用した高収益なモデルである反面、院長の人間力やリーダーシップ、そしてスタッフ育成の仕組みづくりが成功の鍵となることを認識しておきましょう。④小規模多店舗型動物病院(ドミナント戦略で地域を制覇)最後にご紹介するのが「小規模多店舗型動物病院」という経営スタイルです。小規模多店舗型動物病院とは、1店舗あたりの売上が3,000〜5,000万円程度の比較的小規模な動物病院を一定の地域内に複数出店する「ドミナント戦略」を活用して展開する経営手法のことを指します。ここでいう「ドミナント戦略」とは、一定の地域内に複数店舗を集中出店することで、その地域の市場シェアを高め、競合他院に対する優位性を確保する経営手法です。出店地域を絞り込み、密度高く展開することで、地域内のブランド認知度を高め、飼い主さんにとって身近で頼れる動物病院としての地位を確立する狙いがあります。この戦略では、あえて店舗同士の商圏が微妙に重なるか重ならないかといった距離感で複数の動物病院を出店することがポイントです。そうすることで、地域内の飼い主さんがどのエリアにいても、自院のグループ病院を選択肢として選んでもらえるようにすることが可能になります。小規模多店舗型動物病院のメリット小規模多店舗型動物病院には、主に以下の3つのメリットがあります。1つ目のメリットは「仕入れ交渉力が強くなる」ことです。複数店舗を同じ地域内で運営することで、医療機器や薬剤、消耗品などの仕入れを一括して行うことができるため、納入業者や卸業者に対して強い交渉力を持つことが可能になります。また、担当業者も統一しやすくなり、長期的な取引によってコストを抑えやすくなる点も大きなメリットです。2つ目のメリットは「人材配置の柔軟性が高くなる」ことです。近隣エリアで複数店舗を展開すると、勤務獣医師や動物看護師を店舗間で流動的にシフト配置することが可能になります。スタッフの急な欠勤やシフト調整にも対応しやすく、人員配置の効率化が図れます。さらに、若手スタッフが複数の店舗を経験することで、技術や知識を幅広く吸収しやすくなり、スタッフの能力向上やキャリアアップにも効果的です。3つ目のメリットは「地域内でのブランド認知度が向上する」ことです。一定の地域内に集中出店することにより、地域の飼い主さんにとって馴染みのあるブランドとして認知されやすくなります。「どこにでもある動物病院」から、「地域に密着した頼れる動物病院」というポジショニングを確立でき、地域内での競争力を高めることが可能になります。小規模多店舗型動物病院のデメリット一方で、小規模多店舗型動物病院にもいくつかの課題があります。最も大きな課題は、「獣医師の退職や人材不足による経営リスクが大きい」点です。各店舗の規模が小さいため、獣医師が退職した場合にはすぐに店舗の診療能力に影響が出やすく、収益にも大きな影響が及びます。また、複数店舗を運営すると各店舗で必要な獣医師や動物看護師の数が増えるため、十分な人材を継続的に確保することが難しくなります。「教育体制の整備が難しい」ことも課題として挙げられます。店舗ごとに獣医師や看護師が分散して勤務しているため、全体の教育や技術の標準化が難しくなり、新卒や若手の育成が非効率になりがちです。特に新卒獣医師を即戦力化するための体系的なトレーニング体制を構築するには、会社として一定以上の規模や仕組みが必要になります。また、店舗数が増えると経営管理やオペレーションの複雑性も高まります。各店舗の運営方針や診療方針を一定の基準で統一しなければ、品質やサービスレベルにバラつきが生じ、ブランドイメージを低下させるリスクがあります。小規模多店舗型動物病院として成功を目指すには、これらの課題を十分認識し、人材採用や教育の仕組み化を進めること、また獣医師や動物看護師が安心して長期的に勤務できる環境づくりが非常に重要となります。最後に動物病院が年商1億円を達成するためには、自院の強みや現在の課題を正しく診断し、最も力を発揮できる経営スタイルを選択することが大切です。今回の記事を参考に、自院に最適な経営スタイルを見極めて、さらなる飛躍を目指していただければ幸いです。